音階音の名称
音階(1)では長音階を、音階(2)では短音階を一通り見てきました。
音階の構成音には、それぞれ名前があり、特に重要なものもあります。
主音(第1音)
一番大事なのが、第1音である主音です。
クラシックではドイツ語で「トニカ(Tonika)」、ポップス系では英語で「トニック(Tonic)」とも言います。
この頭文字を使って「T」と表すことが多々あります。
音階の始点であり終点である音です。
調名もこの主音で表します。(例:主音が「ハ音」ならば「ハ長調」)
属音(第5音)
主音の次に大切なのが、第5音である属音です。
属音は主音の完全5度上の音です。
「ドミナント」と言い、その頭文字を使って「D」と表すことが多々あります。
下属音(第4音)
属音の次に大切なのが、第4音である下属音です。
下属音は主音の完全5度下の音です。
「サブドミナント」とも言い、その頭文字を使って「S」と表すことが多々あります。
導音(第7音)
特に重要なのは上記のT,D,Sの3つですが、この導音も大切です。
導音は主音の短2度下(=半音下)の音で、主音に導く強い力を持っています。
その他の音
上主音(第2音)
主音の上の音なので「上主音」。
(上)中音(第3音)
主音と属音の中間なので「(上)中音」。
長調では主音に対して(上)中音は長3度、短調では短3度であり、長調短調それぞれを示す役割を持ちます。
「♪ド レ ミ」と弾くと明るいけれど、「♪ド レ ♭ミ」と弾くと暗くなりますよね。
下中音(第6音)
主音と下属音の中間なので、「下中音」。
長音階と短音階を比べてみよう
前のページでは、同じ調号を持つ長調と短調とを平行調といい、密接な関係を持つと書きました。
今度は、同じ主音を持つ長音階と短音階を比べてみたいと思います。
(ちなみに、主音が同じである長調と短調を同主調と言います)
例として、ハ長調とハ短調の各音階を比べてみましょう。
違いを分かりやすくするため、調号を使わずに書いてみます。
3種類ある短音階では、第6音と第7音にそれぞれ違いがありましたが、長音階と短音階の最大の差は第3音です。
長調を長調たらしめているもの、短調を短調たらしめているものは第3音だといっても過言ではありません。
(ちなみに「たらしめる」第2位は、第6音です)
たとえば旋律的短音階の上行と長音階とでは、その違いはたったの1音です。
なのにこの第3音が違うために、全く異なる性質になることを実感してください。
聴き比べ:長音階と旋律的短音階の上行
音階と調
ハ調長音階で作られた曲をハ長調、イ調短音階で作られた曲をイ短調などのように呼びます。
このように音階と調とは密接な関係です。
音階(1)のページで調号について触れましたが、調号の「調」は、この調です。
さてここですべての調の調号と主音とをまとめてみましょう。
まずはシャープ系からです。
続いてフラット系です。
さて、これらを見てみると、気づくことがいくつかあると思います。
まず、同じ調号を持つ長調と短調とは、短3度の関係であること。
また、シャープ系の調号が一つ増える度に、主音が完全5度上がり、フラット系の調号が一つ増える度に、主音が完全5度下がっていうこと。
そしてもうひとつ。
全部で15種類の長調と短調が書かれていますが、鍵盤の一オクターブ間の数っていくつでしょうか?
そう、12です。数が合わないですね。
もうお気付きかも知れませんが、
・ロ長調/嬰ト短調と、変ハ長調/変イ短調
・嬰ヘ長調/嬰ニ短調と、変ト長調/変ホ短調
・嬰ハ長調/嬰イ短調と、変二長調/変ロ短調
は、調名が異なるけれど実際の音は同じです。
これらを異名同音調と言います。
近親調
ここまで、同じ調号を持つ長調と短調を平行調、同じ主音を持つ長調と短調とを同主調と紹介してきました。
これらは密接な関係を持つ者どうしでしたが、他にも近しい関係の調があります。
ひとつは属調で、ある調の属音(第5音)を主音とする調。
もう一つは下属調で、ある調の下属音(第4音)を主音とする調です。
これらをまとめて近親調と呼びます。
近親調の調たちは共通する音が多く、曲中で自然にそれらの調に行き来したりします。
ここに、近親調の図と、イ短調を主調とした場合の近親調を書いてみます。
音階 おわり
必要最小限をシンプルに、というつもりで書いているこの「やさしい楽典」ですが、それでも音階については3ページに渡る量となってしまいました。
ここでは取り上げませんが、音階は長音階と短音階だけでなく、半音階や日本音階、教会旋法など他にもいろいろあります。
沖縄の琉球音階などは、テレビ番組などでお馴染みかも知れませんね。
どこかのページで紹介できたらと思いますが、ここではとりあえず音階については終了です。
お疲れ様でした!