「耳コピが出来るようになりたいけど苦手!」もしくは「これから耳コピを始めたい!」という方に役立つヒントを紹介する耳コピヒント集。
今回はテンションの♯9thを見てみたいと思います♪

♯9thとは?

♯9th 増9度

♯9th(シャープナインス)は、ルート(根音)から増9度の音程です。
増9度が分かりづらい場合は、増2度+1オクターブと考えると分かりやすいかと思います。

異名同音程

さて、増9度の低い方の音を1オクターブ上げて、増2度にしてみたのが上の鍵盤の画像。
あ!
すでにお気づきだった方もいらっしゃると思いますが、これは短3度と同じですね。
これがこの♯9thの特徴なので、頭の片隅に入れておいてください。

♯9thを使えるコードの種類

♯9thを使えるのは、通常はドミナントセブンのみです。

♯9thの特徴ある響き

上で書いたように、♯9thは短3度と同じ音です。
そしてドミナントセブンコードの3rd音は、長3度ですよね。
つまり、異名同音で表すと、♯9thを含むコードは長3度と短3度が同時に鳴っているのと同じ響きを持っていることになります。
コードがメジャーなのかマイナーなのかを決める大切な3rd音が、メジャーもマイナーも持っているようなもので、このぶつかり合う音が他には無い特徴的な響きを生み出すのです。

♯9thを聞いてみよう

4和音構成音(G7)を下段に、テンションノートを上段に分けて表してみました。


5番目のコード表記のように、♯9thの音は異名同音に置き換えて書くことも多いです。
例えばE7の♯9thは「𝄪F」(ダブルシャープF)音ですが、異名同音の「G」で書かれるのが普通です。
上の音符は4番目まで全て「A♯」で書いていますが、実際のところ私も譜面を書くときは「B♭」で書いています。

そして譜例にあるように、♯9thと♭9thは、同じ9thでありながら同時に使うことが出来ます。
ただし9th(♮9th)は同時に使うことは出来ません。

長3度と短3度(正しくは増2度)が同時に鳴っているような、この独特な響きを分かってもらえたでしょうか?

曲の中の♯9th

個性の強いコードなので、使われるジャンルはけっこう限られているように思います。
多いのはジャズやジャズっぽいアレンジの曲のようです。

例1

…と上に書きつつも全然ジャズじゃないアレンジにしてしまいました。
Cm-G7-Cm-G7(♯9)という進行。
1度目のただのG7と、2度目の♯9thが加わったG7とを聴き比べてみてください。
G7の♯9thは「♯ラ」音ですが、異名同音の「♭シ」で書いています。


例2

今度はジャズアレンジです。
イ短調でE7(♯9)を使っています。
こちらも異名同音で「𝄪(ダブルシャープ)ファ」を「ソ」で書いています。


練習問題

では練習問題にチャレンジしてみましょう!
「和音聞き取るの苦手!」と身構えず、1音1音拾うのではなく全体の響きから「♯9th」を感じるかどうか聞いてみてください。

その1

以下の音源は、続けて2種類の和音が鳴ります。
「♯9th」を含む和音はどちらでしょうか?

正解:1番目
*♯9thの音は理論上で正確にはD♯ですが、譜面ではE♭表記になっています。
どちらも不穏な感じの響きを持つコードですが、正解出来たでしょうか?
1つめのC7(+9)は、このページで書いてきたように長3度と短3度がぶつかりあう響きでした。
2つめのCmM7は、ルートと7thが長7度(=短2度=半音)でぶつかりあう響きでした。

その2

同じく、「♯9th」を含む和音はどちらでしょうか?

正解:2番目

*♯9thは正確にはG#ですが、譜面ではA♭で書いています。
どちらも暗さのような響きを持っていますが、1番目のF7(-9)は、9thの音が半音下がった翳り感、2番目のF7(+9)は、♯9th=ルートから増2度=短3度の暗さでした。


おわりに

以上、コードのテンション、♯9thでした。
長3度と短3度(正確には増2度)が共生しているようなこの独自の響きを覚えておいてくださいね。

ここまで♮9th、♭9th、♯9thの3種類のナインスを見てきました。
9th同士では、♭9thと♯9thは同時に使っても良く、♮9thは他の9thとは同時に使わないというのも覚えておいてください。
次は11thに行きます!