「耳コピが出来るようになりたいけど苦手!」もしくは「これから耳コピを始めたい!」という方に役立つヒントを紹介する耳コピヒント集。
今回は抜粋&スルーで素早いフレーズを聴きとるというワンポイントのコツの紹介です♪

抜粋&スルーってどういうこと?

細かくて速いフレーズだったり、複雑なフレーズだったりで聴きにくい時や、間違いがないか確実に確認したい時などに使う技です。
聴き取りたい音に神経を集中するのは誰もが自然にすることだと思いますが、ここで言いたいのはどちらかと言うとスルー力とも言えるでしょうか。
すべての音に集中して聴きとるのではなく、合理的に分類して効率よく抜粋した音だけを聴きとる方法の紹介です。

抜粋&スルーの実際

一体どういうことなのか、具体的に見てみましょう♪
例えばこのようなフレーズがあったとします。

分かりやすいフレーズにしているので、この程度なら簡単だと思う人もいることでしょう。
譜面にするとこんな感じ。

で、これを普通に順番に1音ずつ聞き取るのももちろん良いのですが、それが難しい場合、あるいは難しいと仮定して話を進めますね。
このフレーズの場合はパッと聞いて「高音1音+その他ゴニョゴニョ3音」という分け方が出来ますが、ゴニョゴニョをスルーして高音だけを聴きます。
ゴニョゴニョをスルーすることを心がけてみてください。


ゴニョゴニョを無視して高音だけを聞くと、「ドーミーレーソ」と、とてもシンプルな流れになっていることが分かります。

同様に、今度はゴニョゴニョの最初の音だけに集中して、他を全部スルーして聞いてみましょう。


「ミーソーファーソ」と、こちらもシンプルなことが分かります。

今回のテーマはつまりこういうことなのです。

抜粋&スルーの応用

他のフレーズも見てみましょう。

例1

またもや音高が上がったり下がったりのフレーズです。
先程の例は[高音1+低音3]でしたが、今度は[高音2+低音2]のフレーズです。


同じように、まず低い方の2音のみに集中して、高い方の2音をスルーして聞いてみましょう。
もういっそスルーする音は隠しちゃいます!
聴力もこんな風に隠しちゃうイメージを持ってください。


今度は高い方の2音だけ聞いて、低い方はスルーしてみましょう。
速くて2音が難しい場合は、まず1音(赤丸で囲んだ部分)だけを聞くのも良いです。


例2

今度はある音とある音との間を埋めるようにつなぐフレーズです。
例は分かりやすいように簡単にしていますが、このような階段駆け上がり・駆け下り系のフレーズで迷うことはきっとあると思います。
まずは音源だけ聴きましょう。

多くの人は、最初の「ドレミファソ」と最後の「ド」は簡単にわかったと思います。
問題は「ソ」と「ド」の間ですね。

リズムから、「謎」なのは3音だと分かります。
そしてそれら3音は、「ソ」と「ド」の間にある音だということもわかるでしょう。
これが半音階そのままなら単純で分かりやすいのですが、「ソ」と「ド」の間には音が4つあるのですよね。
下の図で示したように、緑の丸がついた音の中の、3つは出てくるけれど1つは使われていないというわけです。

言い換えるならば、隣同士の音が半音の部分と全音の部分があるということです。
ではそれはどこなのか、を探ることになります。

まずは(順番は何でも良いです)、一番最後の「ド」とその直前の音に集中し、それ以外の音はスルーしてみましょう。

分かりましたか?
分からない場合は繰り返し聞いてみてください。
「ド」の一つ前の音は、すぐ隣の「シ」の音でしたね。
これで一音解決しました。

では続いて、「ソ」とその次の音だけに集中し、他はスルーしてみましょう。

はい、「ソ」の次の音は「ラ(♮ラ)」であることが分かりましたね。
ではわかったところを同様に埋めてみて…

残った空席は一つ、残った音も一つ。
これですべて解決しました。

繰り返しますが、聴きたい音に集中するのはもちろん、今回伝えたいことは「聴きとるポイント以外はスルーする」ということです。

[必読!]抜粋&スルーの注意点

さて、ここで一つ気をつけなければならないことがあります。
局所に集中した後は、必ず全体を見て確認しましょう。
フレーズや、やり方によっては、同じ音に同じ臨時記号を付けてしまったり、♭をつけた後に♮が必要な音なのに付けなかったりのミスをしてしまう可能性があるからです。
点々と聴き取った後は、一つのフレーズとして確認することを必ず行ってください。

もっと一瞬で聴き取りたい

まあ理想は「一音一音」ではなく、フレーズ全体を聴いてパッとわかることですよね。
どうしたらそうなるかと言えば、やはり経験と慣れだと思います。
例えば以下のようなフレーズがあったとします。


これ、知らない人にとっては1音1音聞き取るのが手間になるでしょうが、この響きを知っている人ならば
「完全4度ずつ積み重ねたアレだ」
と、この独特な響きからすぐに分かるものです。
(このコードに正式な表記法はありませんが、一般的に「C4」などのように書かれます)

音楽は無限ですが、音の組み合わせにはある程度のパターンがあり、それらを多く知り、演奏や作編曲などの実践で身につけることで、「あれだな」と分かるようになる物がけっこうあるものです。
音楽の経験を重ねつつ、基本的な理論の知識も付けつつ、現在の実力に応じた聴音や耳コピにチャレンジしていくうちに、簡単に聞き取れるようになるフレーズが増えていくと思います。