今回のレッスンは「異名同音」に関係する事柄のお話です。
聴音力向上とは直接は関係のない話ですが、音楽理論の基本知識の一つとして、知っていて損はないと思います!

異名同音とは

異名同音。
その文字とこれまでの学習から推測が付くかも知れませんが、
異名同音とは、異なる音名でありながら、実際には同じ音であるもの
のことです。

例えば、1つ前のレッスンで触れた嬰ヘ長調をもう一度見てみましょう。


第7音である嬰ホ(♯ミ)音は、鍵盤で見てみると白鍵のファと全く同じ音です。
これが異名同音の一例です。
異名同音をすべて挙げると、下図のようになります。

異名同音 鍵盤 すべて

「嬰」「変」以外にも「重嬰」「重変」もあるのでややこしく見えますが、これは丸暗記するというものではなく、考えれば分かるものです。
また、「隣の隣」が唯一両方とも黒鍵である「嬰ト」「変イ」は、異名同音が唯一2種類しかない音です。

異名同音の音程

異名同音と同様に、譜面の上では異なっている度数でも、鍵盤上では同じである音程があります。
例を挙げてみましょう。

異名同音の音程

まず上側。
イ短調の和声短音階の第6・7音と同じ「ファー♯ソ」で独特な響きの増2度ですが、これは実は短3度と同じ音程です。
次に下側。
ハ長調の音階構成音の中での唯一の増4度ですが、これは減5度と同じ音程でもあります。
上記はほんの一例で、このように異名同音の音程はたくさんあります。
個別に覚える必要はなく、「そういうものだ」ということを知っておいてください。

異名同音調

さて、これまでのレッスンの「♯または♭を4つ以上調号に持つ調」で、気付いた人もいるかも知れませんが、調号が異なるのに実際には同じ音である調が存在します。
これらを異名同音調と言います。
具体的には
変ニ長調と嬰ハ長調
変ト長調と嬰ヘ長調
変ハ長調とロ長調
変ロ短調と嬰イ短調
変ホ短調と嬰ニ短調
変イ短調と嬰ト短調
が異名同音調です。

[一例]変ト長調と嬰ヘ長調

異名同音調

異名同音と聴音

さて、ここまで紹介した異名同音関係は、聴音や耳コピとどう関係するでしょうか?
聴いた音をピアノなどの楽器で弾いて再現する分には異名同音は無関係ですが、それを楽譜にする時に注意が必要な時もあります。

例えば以下のようなメロディーがあったとします。


3小節目2拍目の音は、この場合は普通に変イ音(♭ラ)として書くと思います。
が、もし同じ曲が変イ長調だった場合、楽譜は以下のようになりますが…

同じく3小節目2拍目の音は、上記譜面のように変ヘ音(♭ファ)が正解ですが、この音は鍵盤上では白鍵の「ミ」の音ですよね。
なので「♭ファ」じゃなくて「ミ」(この場合は♮をつける必要がありますが)と書いてしまう人もいるかと思います。
でも理論的には正解は「♭ファ」なのです。
(変イ長調のⅣのマイナー和音(=D♭m…♭レ・♭ファ・♭ラ)であるため)

と言いつつも、当レッスンではまだそういう理論的なことはほとんど紹介していないので、「へ?」と思われるかも知れません。
現時点では「同じ音でも複数の音名があり、調や曲の流れによって相応しい音名で記譜する必要がある」ということを覚えておいてください。

ちなみに上例の「Ⅳのマイナー云々」などについては、「耳コピ ヒント集」で紹介する予定です。

おわりに

さてさて、聴音中級レッスンはこれで終了です。
(のちにレッスンや情報を加筆修正する可能性はありますが)
今後の問題集で練習を積み、上級に進んでもらえればと思います。
上級ではレッスンではなく課題の出題をメインにする予定です。
聴音や耳コピを征服するためのあらゆる方法は、「耳コピ ヒント集」や「必死の聴音」のコーナーで追記していく予定なので、合わせて見ていただければと思います。